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サーバント・リーダーシップとは
サーバント・リーダーシップとは
「サーバント・リーダーシップ」と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか?
企業の人材育成担当者との打ち合わせでもこの言葉がよく出てきますが、当協会の基盤となっている「コーチング」とも共通点は多く、サーバント・リーダーシップを、「コーチングのスキルやマインドを兼ね備えたリーダーシップ」とも表現することができるのではないかと思います。
今回は、スティーヴン・マーフィ重松氏の著書「スタンフォード式 最高のリーダーシップ」(サンマーク出版)のサーバント・リーダーシップに関する記述について要約して紹介します。
サーバントリーダーシップとは
「サーバント」の「serve」には「奉仕」と言う意味があります。
「人々に奉仕するために天国から来た」とも言われるイエス・キリストは、「偉くなりたいと思う者は、みなに仕える者になりなさい。いちばん上になりたいと思う者は、みなのしもべになりなさい」と弟子達に諭しました。
また、東洋では中国の思想家・老子が、「理想のリーダーとは、みんなに『リードされている』と感じさせない人だ」と言う言葉を残しています。
これを現代に合わせると、「リーダーたるもの、一歩下がって援護に回り、部下を前に出して、主体的に取り組ませなさい。部下が上司にリードされたことに気がつかず、『自分でやり遂げた』と思えるくらい、自然にリードしなさい」と解釈することができるのではないでしょうか。つまり、リーダーとは古来、「背中を押す人」と言えるでしょう。
サーバント・リーダーシップとは、「人を育て、奉仕し、支援するリーダーシップ」、「部下の能力を引き出して、背中を押す力」と表現することができます。
サーバント・リーダーシップを発揮する5つのポイント
サーバント・リーダーシップを発揮するための5つのポイントを紹介します。
1)相手の「セーフスペース」をつくる
部下からすると報告しにくい「リーダーにとって本当に重要な情報」は、リーダーの耳にはなかなか入ってこないもの。
部下が話しやすくするために、リーダー自らが弱みを見せることも有効です。
例えば、「私もチェックしたはずなのに、販売キャンペーンに抜けている点があった」と上司の弱点を示すことで、部下も話しやすくなります。
2)「謙虚な問いかけ(質問)」をする
部下が話をしてくれないというリーダーはたいてい、部下の話を聞いていません。「自己啓発の大家」であり、「コミュニケーション論の大御所」であるデール・カーネギーは、「人間は、自分に関心を寄せてくれた人に対して、お返しのように関心を寄せる」と述べています。
語るのではなく、質問をして部下に語らせます。どんな質問も、ポジティブな方向に話がいくように心がけます。
3)「任せる」技術をもつ
部下の仕事の細かいところまで上司がチェックして、決断は全て上司がする。これを「マイクロマネジメント」と呼びます。このような状態では、部下は主体性を持つことができません。
もし、あなたが任せることが苦手なリーダーなら、心理学者レフ・ヴィゴツキーの理論「最近接発達領域(ZPD:Zone of Proximal Development)」が役立ちます。
今の知識とスキルでできる領域(安心領域)と今の知識とスキルではできない(挑戦領域)が重なる部分(ZPDゾーン)の仕事を任せてみましょう。
ZPDゾーンの仕事とは、次のようなものです。
・上司が少し手伝えば、部下ができるようになること
・上司が教えれば、部下ができるようになること
・部下がチャレンジしたがっていること
4)「成果の所有者」を意識する
良い結果と悪い結果のそれぞれに適切に対応することも、サーバント・リーダーシップの範囲です。
そして、「成果の所有主」をはっきりさせることが重要で、「良い結果」が出た場合は、たとえ上司が手伝ったり教えたりした仕事であっても、その成果は「部下のもの」とすることです。上司が前に出て「仕事の成果」を奪い取った瞬間、全てが失われます。
5)「ド正直」に評価する
部下が成果を出した場合、「どう評価するか」も大切です。その際に大切にしたいことは、「正直に、オープンに、公平に」成果を評価することです。
そして、個人の成果には、本人に対して「あなたがやり遂げた」としっかり認め、「すごいじゃないか!」と伝えましょう。上司に認められることは部下にとってお金に勝るとも劣らない大切な評価だと学術的にも分かっています。
ネルソン・マンデラの言葉
27年間の投獄生活を経て、南アフリカ共和国第8代大統領になった、優れたリーダー、ネルソン・マンデラは数々の言葉を残しています。その中から一つを紹介します。
リーダーシップで大切なことは、目的に向かって「人を動かす」こと。つまり、人々の考えや行動の方向を変えることである。
目的に向かって「人を動かす」とは、先頭を切り「私の後をついてきなさい!」と言うことではない。
リーダーが「人を動かす」とは、メンバーに決定権を与えること。メンバーが最初の一歩を踏み出せるように、リーダーが背中を押してもいい。
リーダーが「前に出る」のではなく、メンバーを「前に出す」のだ。
「君に任せる」と言って、メンバーが自ら行動するよう仕向けよう。そうすればメンバーは、リーダーの考えや目的を、おのずと理解してくれるようになる。
まとめ
サーバント・リーダーシップの理解は深まったでしょうか。
「コーチ型リーダーシップ」ともいえるサーバント・リーダーシップ。
多様性や生産性向上、働き方改革が叫ばれる今日ですが、サーバント・リーダーシップは「令和時代のリーダーシップ」とも言えそうです。
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林 英利
JRLA(一般社団法人 日本リレーショナルリーダーシップ協会)代表理事。大和ハウス工業(株)、トヨタ自動車(株)などを経て、プロコーチ・研修講師として独立。2015年より銀座コーチングスクール代表。国際コーチ連盟(ICF)日本支部 顧問