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図書紹介「GREAT BOSS シリコンバレー式ずけずけ言う力」

図書紹介「GREAT BOSS シリコンバレー式ずけずけ言う力」

🕙 2020-01-27 06:00 👤 林 英利

タイトルには「ずけずけ言う力」とありますが、中身を読むと「ずけずけ」からイメージする「無愛想」だったり「無礼」のような言い方を推奨しているわけではありません。

著者のキム・スコット氏はGoogleやAppleでの経験を生かし、今ではリーダー育成などを手掛ける会社のCEOでありコーチでもありますが、彼女自身のリーダーとしてやフォロワーとして経験した多くの失敗談も紹介されており、親しみやすさを感じさせます。

この本のメッセージを一言で言えば、「『徹底的なホンネ』こそ最高の職場の人間関係」となるということ。そして、そのような関係を築くためには、深い信頼関係を築く必要があると彼女は言います。


なぜシリコンバレーの企業のリーダーシップが研究されるのか

この本のタイトルにも「シリコンバレー式」とあるように、リーダーシップや人材育成方法について「シリコンバレーの企業が研究されるのはなぜなのでしょうか。

それは、「新世代の経営者は理論好きだから」とか「研修予算が多いから」とか「急成長した大企業だから」ではなく、「人材競争がほかのどこよりも厳しいから」だと説きます。

個人の能力を引き出し組織に貢献させながら、本人の満足度も高めるマネジメント手法として注目されているわけです。

また、同じシリコンバレーの企業であっても、GoogleとAppleの人材育成方法の違いや共通点などにも触れられており、原則と独自性といった部分で参考になります。


「徹底的なホンネ」の関係を築くためのヒント

本の前半(Part1)では、著者の体験談を基に、「徹底的なホンネ」の関係を築く大切さを語り、後半(Part2)では、実際にそのような関係性を築くための「ハウツー」が書かれています。

今回は、前半(Part1)の中から、特に印象に残った部分をご紹介したいと思います。


仕事上の鎧を捨てる

上司と部下の間の信頼関係を築くには、まず「仕事の鎧」を捨てること。自分自身の人格を丸ごと出して、部下のひとりひとりを人間として気遣わなければならない。


上司は部下より偉いのではない、役割なのだ

「上司になると、知らず知らずのうちに、部下よりも自分が優秀だとか賢いとか感じはじめてしまうのだ。そんな態度をちらつかせていたら、絶対に「部下がついていきたい上司」にはなれない。逆に、「顔も見たくない上司」になってしまう。」

「上司というのはあくまでも仕事上の役割で、人間の優劣ではない。」


心から相手を気にかけるとは

「「心から相手を気にかける」とは、(中略)、部下の仕事以外の人生と夢を認めることだ。(中略)、人間としてお互いを知り合うことだ。お互いにとって何が大切かを知ることだ。わたしたちを朝ベッドから起き上がらせて仕事に向かわせるものはなにかを、伝え合うことだ。」


「3人のれんが職人」の逸話を違った角度で見てみると

よく知られた、建築家レンが3人のれんが職人に「何をしているか」と質問した話(「仕事をしています」「壁を作っています」「神様のために大聖堂を建てています」→ 仕事に対する意義や壮大な目的があれば、どんな仕事も大切に感じられるというたとえとして使われる)を紹介した上で、

「上司の役目は部下に意義を与えることではなく、部下をよく理解し、ひとりひとりが仕事にどんな意義を見出しているのかを理解することだ。」

「レンの役割は、職人の話を聞き、聞いたことをしっかり心に留め、全員がそれぞれに意義を見つけられる環境を作ることだった。」と述べています。この視点は新鮮でした。


まとめ

今回は、「GREAT BOSS シリコンバレー式ずけずけ言う力」の概要と内容の一部をご紹介しました。

最高の「上司と部下の関係」を築くためには、相手が部下であっても年下であっても、相手を人として尊重した「人と人の関係」を築き、心からの関心を抱くこと。

「徹底的なホンネ」の関係を築くための具体的な方法については、ぜひ本を読んでみてください。

林 英利

JRLA(一般社団法人 日本リレーショナルリーダーシップ協会)代表理事。大和ハウス工業(株)、トヨタ自動車(株)などを経て、プロコーチ・研修講師として独立。2015年より銀座コーチングスクール代表。国際コーチ連盟(ICF)日本支部 顧問