JRLA Staff Blog
経験学習サイクルを回す
経験学習サイクルを回す
1on1ミーティングのベースには、経験から得た学びを次に活かすという経験学習サイクルという仕組みがあります。その仕組みを理解して、メンターとしてのサポート力を高めましょう。
1on1ミーティングの目的を私たちは、
社員の自発的行動を促すこと
ととらえています。
自発的行動の源泉の多くは、社員の経験の中にあり、
社員の経験学習サイクルをまわすことによって、
自発的行動が目標達成や問題解決につながっていきます。
今回は、この経験学習サイクルについてお伝えします。
経験学習サイクルとは何か
経験学習サイクルとは、経験を学びに変えて、次の経験の場で活かしていくということです。
経験学習サイクルには、以下のステップがあります。
経験する⇒内省する⇒教訓を引き出す⇒次の機会に活かす
この経験学習サイクル、簡単そうに見えますが、
人は自分に甘く、また自分の中では思考が整理されにくく、
実践するのはなかなか難しいものです。
経験学習サイクルを回していくためには、
3つの壁を心得ておくことが必要です。
経験学習サイクルに潜む3つの壁
経験学習サイクルに潜む壁については、
松尾睦氏の著書
「部下の強みを引き出す経験学習リーダーシップ」(ダイヤモンド社)に分かりやすく解説されているので、一部引用します。
内省の壁
最初の壁は
経験する⇒内省する
の間に潜む「内省の壁」。
社員の中には、自分の経験・行動を振り返る習慣を持たない社員が少なくありません。
行動量を求められる社員、多忙を極め業務を消化することに精一杯の社員によく見られます。
ワクワクするような目標設定をしていながら、
また失敗した、また失敗した、どうもうまくいかない
で止まっている社員。
このような社員は、経験からの学びが少ないといえます。
成功・失敗に関わらず、定期的に自分の経験を振り返る習慣を持つことが大切です。
教訓の壁
2つ目の壁は、
内省する⇒教訓を引き出す
の間に潜む「教訓の壁」
経験を振り返り、良かった、悪かったと一喜一憂するだけでは、
成長につながりません。
「なぜうまくいったのか」
「次に気をつけることは何か」
という教訓を引き出すことが大切です。
人は悪かったことの反省に思考が集中しがちですが、ポジティブな内省も重要です。
成長のために、小手先の改善策だけではなく、経験の中から、
自分は何が長所なのか、強みなのか、
何が足りないのか、短所なのか、弱みなのか
といった気づきを見つけましょう。
実践の壁
そして、3つ目の壁が
教訓を引き出す⇒次の機会に活かす
の間に潜む「実践の壁」です。
せっかく教訓を得ても、それを次の機会に活かせない、実践できない社員も少なくありません。
「準備不足のために上手くプレゼンテーションができなかったので、次回はしっかり準備しよう」
という教訓を得ても、あいかわらず準備不足のプレゼンをしてしまう社員、心当たりはありませんか?
このように教訓を次の実践に活かしきれていない社員には、
抜本的な習慣の変化が必要です。
上司等メンターのサポート
上記3つの壁を乗り越えるには、いずれも習慣化が必要であり、
習慣を定着させるために、1on1ミーティングを継続します。
最初の壁「内省の壁」であれば、
行動・経験を振り返り、自分なりの内省を言葉にする機会を持つ。
「教訓の壁」であれば、
経験から何を学んだのか、ゆっくり考え、そして言葉にしてみる。
さらに、「実践の壁」であれば、
次はどの機会に内省を活かすのか、一緒に考え、計画化してみる。
一人であっても出来ないことは無いですが、
一人で考え、行動に起こすことは、難儀です。
さらに、言葉にして他人に話すことが、
同時に自分の耳で聞くことになり、自分の耳で聞くことによって気づきが得られる、というオートクライン効果が働きます。
上司等メンターは、
社員の承認欲求を満たし、傾聴することによって、
社員の気づきを引き出し、自発的行動を促す。
経験学習サイクルをまわすためにサポートするのが上司等メンターの役割、と理解しておきましょう。
向川 敏秀
JRLA(一般社団法人 日本リレーショナルリーダーシップ協会)専務理事。積水ハウス、松下電器産業グループなどを経て、経営コンサルタント、研修講師として独立。/銀座コーチングスクール銀座一丁目校代表