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「あのとき“クビ”にしなくて本当に良かった」あるリーダーの冷汗とは

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「あのとき“クビ”にしなくて本当に良かった」あるリーダーの冷汗とは

🕙 2019-09-16 06:00 👤 林 英利

人事権のあるリーダーであれば、組織やチームに対して悪い影響を与えるような人物には、異動や最悪の場合は解雇を考えたこともあるでしょう。

有名海外アパレルブランドが運営するメガストアのストアマネジャーだったEさんも、協力的ではないベテランスタッフの処遇に頭を悩ませていました。


解雇目前のベテランスタッフ

「私の下には若いリーダーがいます。そして、ベテランのスタッフが2名ほどいるのですが、このベテラン2人が協力的ではなくて、私も若いリーダーも手を焼いていました。それで、その2人にはもう辞めてもらおうと思っているんです…。」

ストアの2年目の運営にあたり、部下に対する自身のフィードバック力を高めようと考え、Eさんはコーチングをマネジメントに生かすことにたどり着きました。

コーチングの基本的なスキル、「承認」スキルや「傾聴」スキルを習得したEさんは、次回までの行動目標として次のようにコミットメントされました。

「今回学んだ『傾聴』を使って、スタッフ一人一人と15分ほど個人面談を行ってみたいと思います。初めての試みです。」


個別の面談で何が起きたのか?

しばらくして、Eさんに再会すると、次のように報告してくれました。

「一人一人と面談をしましたよ。やってみて、大変でしたがとても良かったです。」

「あの2人とも個別に面談したのですが、15分の予定が2時間もかかってしまって。でも、驚くことが起きました。」

「最初は、愚痴しか出てこなかったのですが、グッとこらえて、『聴く』ことに徹しました。すると、少しずつ前向きな言葉が出てくるんですよね。」

「そこで、私が描いていたストアの来年度の事業計画を出して、『こんなことをしてみたいと考えている』と話してみると、彼女たちの表情が変わってこう言ったんです。」

「『こういう話をマネジャーとしたかったんです! 私たち、この計画に協力しますよ!』って。アイデアも出してくれました。ビックリしてしまいました。」

それから、そのベテランスタッフの2人は、Eさんや若いリーダーに対して協力的になり、ストアにとって欠かせない存在になったということです。


部下との関係性を深める「コーチング」や「1on1ミーティング」

この話は、今から7年ほど前なので、当時は「1on1ミーティング」という言葉はまだ一般的ではありませんでしたが、コーチングなどを活用した個別の面談の良い事例ではないかと思います。

そして、この面談からは、以下のような効果が得られていることが分かります。​​​​​​​


  1. 部下なりにチームを良くしたいとか、何か貢献したいと考えていたことを上司が理解できた
  2. 上司に話をじっくり聴いてもらい、考えを理解してもらえたことで、部下の気持ちがスッキリした
  3. 上記1や2によって、信頼関係が生まれた
  4. 上司が描くビジョンや計画を共有することができ、チームとしての一体感が生まれた


クビにしなくて本当に良かった・・・

後日、Eさんは、「あのとき、あの2人を辞めさせなくて本当に良かったです。時間を取るのは大変ですが、部下の話をしっかりと聴いたり、上司として感じていることを伝える時間を取るのはとても大切だということを実感しました。」と話してくれました。

「相性」というものは変えられないかもしれませんが、「接し方」はいくらでも変えられます。相互理解を深めた上で、相手の「スイッチ」を探してみましょう。どこかに必ずあるはずです。


林 英利

JRLA(一般社団法人 日本リレーショナルリーダーシップ協会)代表理事。大和ハウス工業(株)、トヨタ自動車(株)などを経て、プロコーチ・研修講師として独立。2015年より銀座コーチングスクール代表。国際コーチ連盟(ICF)日本支部 顧問