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『老子』にみるリーダーのあり方

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『老子』にみるリーダーのあり方

🕙 2019-11-15 06:00 👤 大石 典史

最近、JRLAブログにおいて『孫子の兵法』を題材に取り上げたところ、多方面から好意的なコメント・評価をいただきました。このことには大変嬉しく感じています。

私が古典を素晴らしいと感じるのは、その中に、人の「あり方」として普遍的な真理が示されていると感じるからです。言い換えれば、人が生きる上で迷ってしまった時や立ち止まってしまった時、立ち返るべき原点がそこに示されていると感じるからです。

持論ですが、このことは、人の「あり方」のみならず、ビジネスパーソンやリーダーの「あり方」にも十分適用できるものだと思っています。


中国古典『老子』とは?

10月に2週続けて『孫子の兵法』について取り上げましたが、今回は『老子』の中にある、私の大好きな一節を取り上げたいと思います。

その前に『老子』について、どういう人物(・書物)であるのかを確認しておきます。


◆人物として

中国、春秋戦国時代の楚の思想家で、道家思想の祖とされている人物。儒家の人為的な仁義道徳思想に対し、宇宙の根本を「道」や「無」と名づけ、これに適合する無為自然(作為がなく自然のままであること)への復帰を人間のあるべき姿と説く。

◆書物として

老子の著書と伝えられる道家の経典。二巻、八一章からなり、戦国時代初期から中期頃にかけて成立したとされる。


「上善は水の如し」とは?

さて、あらためて『老子』の一節について。


「上善は水の如し」


この一節は、近年、「上善如水」という日本酒の銘柄になったこともあり、ご存知の方が多いかもしれません(特に日本酒好きの方には)。

以下に原文を読んでみます(守屋洋『世界最高の人生哲学 老子』より)。


「上善(じょうぜん)は水の如し。水は善く万物を利して争わず、

衆人の悪(にく)む所に居る。故に道に幾(ちか)し。」


最も理想的な生き方は、水のようなものである。

水は万物に恩恵を与えながら相手に逆らわず、人の嫌がる低い所へと流れていく。

だから、道のありように近いのである。


ここから読み取れる真理として、守屋洋氏は以下の2つのキーワードを掲げて解説しています。

すなわち、「柔軟性」「謙虚さ」です。


まず、「柔軟性」については、水というのは、丸い器に入れると丸い形になり、四角な器に入れると四角な形になるように、相手に逆らうことなく、相手の出方に応じてこちらの体勢を変えていく柔軟性を持っている、と言います。


次に、「謙虚さ」については、水がないと地球上の生物は生存できない、そんな大きな働きをしていながら、自らは低い所に向かって流れていく、低い所は誰もが嫌がる場所だが、水はあえて人の嫌がる低い所に身を置こうとする謙虚さを持っている、と言います。


リーダーに問われる「柔軟性」と「謙虚さ」

私がこのブログで『老子』の「上善は水の如し」を取り上げたのは、その姿が、リーダーの「あるべき姿」に通じるものであるように感じたからです。

すなわち、リーダーはメンバーとの協働関係において、彼らがどんな人格であろうと、また、どんな役割であろうと、リーダーとして常に柔軟性をもって接することが求められますし、リーダーだから偉いのではなく、リーダーだからこそ、メンバーを常に尊重する謙虚さをもつことが求められるのではないか、ということです。


大石 典史

東証一部上場企業2社を含む4社で法人営業、コンサルタント職、人事総務等を経験。現在は、銀座コーチングスクール(GCS)丸の内校代表、研修講師、パーソナルコーチを務める。国際コーチ連盟(ICF) 認定コーチ(ACC)。