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書籍紹介「リーダーのための経営心理学 ー人を動かし導く50の心の性質ー」
書籍紹介「リーダーのための経営心理学 ー人を動かし導く50の心の性質ー」
今回は、心理カウンセラーであり、公認会計士・税理士でもある藤田耕司氏の著書「リーダーのための経営心理学 ー人を動かし導く50の心の性質ー」の概要をご紹介します。
リーダーシップ論について、心理学の観点から眺めてみましょう。
人を動かし導く4つの要素
人を動かし導いていくための要素は4つある。それは、人間的信頼、能力的信頼、情緒的対話、論理的対話だ。
人間的信頼とは、人柄や人間性に関する信頼のことを言う。仕事はできるのに出世できない人がいるが、それは、周囲からプレイヤーとしての能力的信頼は得ているものの、人間的信頼が得られていないことが原因ではないかと考えられる。人間的信頼のない人間が人の上に立つと、メンバーのモチベーションは下がり、組織が弱体化していく可能性が高いため、経験豊富な評価者は、人間的信頼のない人間を上のポストに引き上げようとはしない。
能力的な信頼とは、実際の仕事ぶりや、過去の実績・経験、他者からの評価、地位、肩書き、資格などから判断する、その人の能力に関する信頼のことを言う。接待営業で相手と仲良くなったにもかかわらず、いつまで経っても契約が取れない人がいる。この場合は、人間的信頼は得られているものの、能力的信頼が得られていない可能性がある。
情緒的対話とは、相手に快の感情をもたらし、不快の感情を取り除くことで、相手の感情部分をつかさどる脳からOKを引き出す対話のことをいう。それに対し、論理的対話とは、論理的・合理的に道筋を通して話し、相手の論理の部分をつかさどる脳からOKを引き出す対話のことをいう。
例えば、ビジネスでの契約交渉の際、丁寧に礼儀正しく、その契約からもたらされる展開がいかに素晴らしいものかについて情緒的に話し、相手の感情の脳からOKを得る。さらに、金額や内容、良い契約条件を示すことで、相手の論理の脳からOKを得る。このように、情緒的対話と論理的対話を行うことによって、相手が契約書にサインする可能性を高めることができる。
人間が抱く3つの基本的な欲求
人間が抱く根本的な欲求について示された理論に、「マズローの欲求段階説」というものがある。さらにこれを、発展、修正し、提唱されたものに「ERG理論」がある。
ERG理論とは、Existence(生存欲求)、Relatedness(関係欲求)、Growth(成長欲求)の頭文字をとったもので、マズローの欲求段階説のように下位の欲求が満たされると上位の欲求が生じるのではなく、状況に応じて3つの欲求が並列的に生じることがあるとしている。
生存欲求とは、生きることに対する物質的・生理的欲求で、食べ物や住環境などの欲求や、賃金、雇用条件、安全な職場環境などに対する欲求をいう。
関係欲求とは、家族や友人、上司、同僚、部下、その他の重要な人と良好な人間関係を持ちたい、認められたいという欲求をいう。
成長欲求とは、自分が興味を抱く分野で能力を伸ばし成長したい、苦手分野を克服したいという欲求や、創造的・生産的でありたいとする欲求をいう。
ERG理論はマズローの欲求段階説よりもシンプルで現場の感覚に近く、実際に組織の活性化や人間関係の改善において大いに効果を発揮している。
なぜビジョンや目標を掲げる必要があるのか
人は「未来」に対するイメージの抱き方によって、「今」の感情や生き方が大きく変わるものである。このことを踏まえると、相手を動かし導きたいのであれば、相手の未来のイメージを動かすことが有効だ。端的に言えば、暗い未来のイメージを払拭し、ワクワクするような未来のイメージを提示するということになる。
人は自分をワクワクさせてくれる人のところに集まり、ワクワクすることをしている組織に属しようとする。人をワクワクさせること。これはリーダーに求められる重要な役割だ。
ビジョンや目標を掲げることは、メンバーのワクワクを喚起し、その達成に向けての動機を強くするとともに、ビジョンや目標を共有することで類似性の法則が働き、メンバー間の距離を縮め、チームや組織の一体感を生み出す効果がある。
まとめ
いかがでしたでしょうか? 私が印象に残った部分の一部について要約や引用してご紹介しました。
この本には、人を動かし導く50の心の性質が書かれています。ご紹介した理論を実践する具体的方法や、その他の性質についてご興味ある方は、ぜひ読んでみてください。
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林 英利
JRLA(一般社団法人 日本リレーショナルリーダーシップ協会)代表理事。大和ハウス工業(株)、トヨタ自動車(株)などを経て、プロコーチ・研修講師として独立。2015年より銀座コーチングスクール代表。国際コーチ連盟(ICF)日本支部 顧問