JRLA Staff Blog

書籍紹介「世界トップエリートのコミュ力の基本 ビジネスコミュニケーション能力を劇的に高める33の絶対ルール」

書籍紹介「世界トップエリートのコミュ力の基本 ビジネスコミュニケーション能力を劇的に高める33の絶対ルール」

🕙 2020-03-16 06:00 👤 林 英利

ベストセラー『最強の働き方』『一流の育て方』著者であり、“グローバルエリート”ことムーギー・キム氏が書き下ろした、コミュ力」の教科書をご紹介します。リーダーの「コミュ力向上」にも役立ちます。


本書は「ビジネス・コミュニケーション能力」を高めることを目的とした一冊で、アウトプット(発信力)のの高め方と、正しいアウトプットをするための基礎となる、インプット(受信力)の強化方法について、詳しく紹介されています。


<第1部 アウトプット編>

第1章文章の絶対ルール

第2章 プレゼンの絶対ルール

第3章 会話の絶対ルール


<第2部 インプット編>

第4章 発信力を伸ばす、質問力の絶対ルール

第5章 確かな情報を手に入れるインテリジェンス戦略


本書では、ビジネスコミュニケーションを高める33のルールが紹介されていますが、その中から、特にリーダーとして留意したいと私が思った5つについて、ポイントとコメントを記したいと思います。


特別な関心と敬意を、会話の参加者全員に払う

[ポイント]

複数人での会話で気をつけたいのは、皆が関心を払われ、尊重されたと感じるように配慮することだ。会話の内容以前に、会話の参加者全員に「自分は尊重された」と思ってもらうことが重要である。


チーム内のミーティングや打合せなどの際、キーマンとなる人物が中心となった会話になることが多いと思いますが、ミーティング中に一言も話をしないメンバーはいないでしょうか。リーダーやファシリテーターは、一人ひとりのメンバーが安心して発言できる環境をつくることが大切です。


最強の賞賛力で、相手の自己肯定感を高める

[ポイント]

効果的な褒め言葉ほど、無料で相手との良好な関係構築に役立つものはない。また、相手の承認欲求を満たす上で「ポジティブ陰口」も有効だ。相手を本音で褒めることは、そのポジティブな行為が社会に循環し、本気で褒められた人のモチベーションを高める。


どんな人にも、多かれ少なかれ「承認欲求」があると言われています。特にポジティブなフィードバックは、相手のやる気を高めます。「言うべきほどのものではない」とか、「本人が満足して、チャレンジしなくなる」と思い、褒めることを躊躇するリーダーも少なくありませんが、ぜひ、小さなことでもよいので、それを見つけて伝えてみましょう。そのうちに本人の行動に変化が現れてくるはずです。


質問で相手の凄さを引き出す、受け身の美学を心がける

[ポイント]

その人の功績に関して、本人は言いたいのだけど、自分からは言い出せないことも多い。そんなときは自分から「相手が一番輝く瞬間を引き出すための質問」を切り出してみる。「相手の凄さを最も引き出すための配慮」も、質問者の腕の見せどころなのだ。


部下のやる気を引き出す方法として、上司が部下に「ヒーローインタビュー」を行うことをおすすめしています(実は「コーチング」なのですが)。「苦労したのはどんなところ?」「今の気持ちは?」「うまくいった要因は何?」「どんな工夫をしたの?」などなど。最初のうちは部下が恥ずかしく感じるかもしれませんが、そのうちに自信を持った表情になり、次への意欲が高まっていく様子を感じられるでしょう。


共感力で「心理的安全地帯」を築く

[ポイント]

人の行動を変えることは、外部から説得するのではなく、深く気づかせるような質問をすることが重要である。人は、外から言われると反発するが、自分自身で気づけば腹に落ちているだけに、行動につながるからだ。そのためには、相手との関係の中で、「何を話しても大丈夫」と感じる「心理的安全地帯」を築くことが重要である。


著者は当ルールの説明の中で、コーチングとその必要性や効果について紹介し、その本質は相手の「心理的安全地帯」をつくることだと述べています。また、そのためには、「お互いの行動原理や価値観の源泉を共有すること」とも指摘し、表面的なスキルのみの習得ではなく、相手に興味をもち、相手を尊重する姿勢が基盤になると読み取ることもできるでしょう。


「愚かな一貫性」の危険さに気づく

[ポイント]

人間は、一度なんらかの判断をすると、その初期判断に反する情報を不快に思って排除するようになる。これを「認知的不協和の解消欲求」=「愚かな一貫性」という。この「愚かな一貫性」にこだわると、大失敗につながることがある。そうならないためには、自分の「確信」や評価基準を再検討し、自分の思い込みに反する情報を排除しようとしていないかを自省することだ。


リーダーには決断を求められる場面が多くあります。その際、都合の悪い情報や反対意見に対して排除したいという気持ちが生じることもあるでしょう。著者は、「前提を疑い、目的や評価指標を再検討することは、価値観や哲学が試されるので精神的困難を伴う」と共感を示した上で、「しかしそれでも、目標の中身や評価指標を疑わない『達成』に、果たしてどのような価値や意義があるのかに、勇気を持って向き合うことが重要なのだ」と指摘しています。コーチング的なアプローチから言えば、様々な視点から対象を眺め(視点の移動)、メリット・デメリットを冷静に検討し、本質的な目的や理念を基盤とした選択をすることが、「大失敗」を避けるための一つの方法といえるでしょう。


まとめ

本書は著者の世界各国での体験談やユーモア・ジョークなども織り交ぜられ、楽しく面白く読み進めることができます。「ビジネス・コミュニケーション力」を高めるためには、インプットとアウトプットの両面から磨く必要があり、特に私は、「偏った情報のみによる判断は、危険を伴う」ということをあらためて感じました。

リーダーのみならず、広くビジネスパーソンにおすすめの一冊です。


林 英利

JRLA(一般社団法人 日本リレーショナルリーダーシップ協会)代表理事。大和ハウス工業(株)、トヨタ自動車(株)などを経て、プロコーチ・研修講師として独立。2015年より銀座コーチングスクール代表。国際コーチ連盟(ICF)日本支部 顧問