「正しい答えを手にするための鍵は、正しい問いにある。」今回は、マサチューセッツ工科大学リーダーシップセンター所長でプロフェッショナル・コーチでもある、ハル・グレガーセン氏の書籍をご紹介します。
この本には、(1)仕事でも私生活でも、良い答えを見つけたければ、良い問いを立てる必要があること、(2)よい問いを立てるために、自分でよい問いが湧いてくる特別な環境を作ることができること、(3)よい問いは、問う技術を磨き続けることで、思いつくようになることなどについて書かれています。
では、「よい問い」とは、一体どういうものなのでしょうか?
たとえば、コダックの創業者のジョージ・イーストマンは、若い頃に、写真撮影の機材があまりに運びにくく高価であることを知り、「写真撮影をもっと手軽で簡単なものにして、一般の人でも楽しめるものにできないだろうか」という問いが浮かび、その後、仲間たちと共に研究と開発に没頭し、最初のコンパクトカメラ「コダック」を発売しました。
また、ある生物工学の研究室では、「どうすれば絆創膏を心臓や膀胱などのような湿った部位に貼ったままにできるか」という問題に対して、「自然界のカタツムリやミミズからどんなヒントが得られるだろうか?」と問いを立てることで、研究が一気に進み、製品開発に大いに役立てたそうです。
イノベーションにあたっては、たとえば、自動車メーカーであれば、「よりよい車を作るにはどうすればいいか」という問いよりも、「顧客によりよい移動手段を提供するためにはどうすればいいか」という問いのように、「枠組みの拡大」を行うことで、イノベーションの幅がいっきに広がるとも述べられています。
新しいアイデアを創出する際に「ブレイン・ストーミング」という手法を活用する場合があります。ブレイン・ストーミングは、ユニークで新しいアイデアを生み出すことを目的として行われるものですが、「クエスチョン・バースト」は、問題の新しい解決策を探るための問いを創出するブレイン・ストーミングと言えます。
その方法について、本書から要約し以下にご紹介しましょう。
よい問いは一朝一夕で身につくものではなく、問う技術を磨き続けることで、思いつくようになると筆者は述べています。
また、組織の中で問いの文化を醸成させるためには、「どんな問いを発しても大丈夫」という環境をつくることが大切だとも書かれています。
仕事の課題を新たな視点で解決したいと思われるリーダーの方におすすめの一冊です。
林 英利
JRLA(一般社団法人 日本リレーショナルリーダーシップ協会)代表理事。大和ハウス工業(株)、トヨタ自動車(株)などを経て、プロコーチ・研修講師として独立。2015年より銀座コーチングスクール代表。国際コーチ連盟(ICF)日本支部 顧問