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部下をサポートする際の「問題解決手法」と「コーチング的アプローチ」の違い

部下をサポートする際の「問題解決手法」と「コーチング的アプローチ」の違い

🕙 2020-04-29 06:00 👤 林 英利

部下の問題解決や目標達成を支援するにはいくつかの方法がありますが、部下の意欲を引き出すには、どのようなアプローチが良いのでしょうか?


部下が前向きにならないのはなぜなのか


管理職やリーダーとして、部下が抱える悩みや課題に対して、その解決に向けたサポートをすることも日々多くあることと思います。


そのサポートによって、部下が解決に向けて前向きに行動できるようになることもあると思いますが、一方で、前向きにならないとか、どのように取り組んだら良いか分からない、または、あなたからのアドバイスや指示に対して、納得していないように感じたこともあるのではないでしょうか?


では、相手の納得感や意欲を高めるためには、どのようなサポート方法が良いのでしょうか?


対人支援の方法としては、大きく2つの方法があります。一つは、問題解決手法によるサポート、そして、もう一つがコーチング的アプローチによるサポートです。


これらの方法には、類似点もありますが、一方で相違点もあり、どちらの手法をとるかによって、相手の意欲やモチベーションに大きな違いが生じる場合があります。


次に、問題解決手法とコーチング的アプローチを比較してみましょう。


問題解決手法とコーチング的アプローチの違い


問題解決手法の一般的な流れは、テーマの選定→現状の把握→目標の設定→要因解析→対策立案など(→実施→効果の確認→歯止め・標準化)となっています。


それに対して、コーチングでは、目標の設定→現状の把握→プロセスの設定→最初の行動の明確化など(→行動の促し→行動→振り返り→次への活用)の流れをつくります。


これらを比較すると、現状の把握と目標の設定の順番が異なりますが、コーチングでも現状の把握を先に行う場合もありますので、大きな違いは「要因解析」の有無と言えるでしょう。


では、コーチングにはなぜ「要因解析」がないのでしょうか? それは、問題解決手法とコーチングでは、「当てるべき焦点が異なる」からだと考えられます。


問題解決手法は、その名の通り「問題」に焦点を当てます。「その問題が発生したのは何が原因なのか?」「その原因はなぜ生じたのか?」というように、「なぜ?」を繰り返し、原因の根源となっている「真因」を探ります。そして、その真因を取り除くための対策を講じていきます。


それに対してコーチングによる支援では、問題に焦点を当てるのではなく、問題を解決した状態やあるべき状態、学んだことや得られたこと、相手の意向や気持ちなどに焦点を当てます。


問題解決手法とコーチング的アプローチの例


では、これらの方法が、それぞれ、クライアントの意欲にどのような影響を与えるのでしょうか。


例えば、ある部下が大事なプレゼンで失敗をしてしまったとします。そして、上司が問題解決手法によって、この部下をサポートするとしたら、次のようになります。


課長「失敗した原因は何だと思う?」

部下「練習不足だと思います…。」

課長「ではなぜ、練習不足だったんだ?」

部下「課長の指示通り、取り組まなかったからだと思います…。」

課長「じゃ、なぜ、私の言うことを聞かなかった?」

部下「…重要なプレゼンだという意識が低かったのだと思います…。」


尋問のようで胃が痛くなりそうです。これでは部下の意欲が高まるとは考えられません。

では、コーチング的なアプローチであれば、どのようになるのでしょうか。


上司「今回の経験で得られたことは何かな?」

部下「練習が大事だということが分かりました。」

上司「なるほど。次の機会にはどのようなプレゼンをしたい?」

部下「…顧客の知りたいことを、もっと分かりやすく伝えたいです。」

上司「そうか。他には?」

部下「もっとスムーズに話せるようになりたいです。」

上司「では、そうなるためには、どのような取り組みをすると良いかな?」

部下「そうですね、まずは顧客のニーズをしっかりと把握して…」


部下が、反省をするとともに、次に向けて前向きに取り組めるようになっているのがお分かりになると思います。


このように、コーチングでは「要因解析」をしていないというよりは、問題に焦点を当てるのではなく、理想の状態に焦点を当てながら、現状と比較し、必要な行動を相手から引き出しています。そうすることで、部下は意欲をなくすことなく、課題を明確にした上で次に向けて取り組むことができるのです。


まとめ


問題解決手法とコーチングの違いについてお話ししましたが、問題解決手法よりもコーチングの方が優れているということではなく、これらを上手く使い分けることが大切だと思います。


一概には言えませんが、簡単に分けるとすれば、問題解決手法は「物」や「事」などに対する改善活動に活用し、コーチングは「人」の成長などに関する時に活用すると良いと思います。


今後の部下育成のお役に立てば幸いです。

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林 英利

JRLA(一般社団法人 日本リレーショナルリーダーシップ協会)代表理事。大和ハウス工業(株)、トヨタ自動車(株)などを経て、プロコーチ・研修講師として独立。2015年より銀座コーチングスクール代表。国際コーチ連盟(ICF)日本支部 顧問