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立場という鎧を脱ぐ

立場という鎧を脱ぐ

🕙 2020-06-03 06:00 👤 林 英利

上司と部下。そんな立場や肩書きが、人間関係の構築や、チームのパフォーマンス向上の邪魔をしていることがあるかもしれません。


部下や同僚の大切なものを知っているか?


本格的なコーチング研修を導入した企業にその効果を尋ねてみると、意外にも多いのは、「同僚のことをよく知れたこと」という感想だ。何年も同じ職場で一緒に働いてきた仲なのに、研修のセッション演習の中で、相手の知らなかった一面を多く知ることができた、というのだ。


私たちは、一緒に働いている同僚や仲間のことを、あまりよく知らないのかもしれない。「今のご時世、相手のプライベートについて、あまり聞かない方がいい」とか、「仕事に差し支えなければ、それで良いのではないか」という声もあるだろう。でも、もっとよく知り合っていたら、仕事の成果も変わるのかもしれない。



いがみ合う仲を変えたもの


私の体験した話を紹介したい。

転職してまもなく、私はある大きなプロジェクトの担当を引き継いだ。プロジェクトには地域を代表する大企業や、業界大手の企業などが名を連ねていた。


プロジェクトが本格的にスタートすると、小さなトラブルや不具合などが生じ始め、都度、問題を解消しながら進めていった。しかし、プロジェクトが進行するにつれ、不具合の規模は少しずつ大きくなって、解決までの時間がかかるようになっていった。本来であれば各社協力して進めなければならないはずが、だんだんと互いにいがみ合うようになり、毎週の定例ミーティングはピリピリとした雰囲気になっていった。


そのような中、あわや大事故になったかもしれない可能性のある事故が立て続けに発生し、事態を重く受け止めた顧客から、「再発防止策が講じられるまでは、プロジェクトを中断して欲しい」と伝えられた。私や各社の主要メンバーたちは、連日深夜まで再発防止策を講じ、顧客の了承を得て、1週間後には何とかプロジェクトを再開することができた。


この非常事態の連日連夜の作業の中で、私たちはそれまで話したことのないような、仕事以外の会話もするようになった。そして、各社が協力した結果、難局を乗り越えることができたのだ。また、このタイミングで、主要メンバーでの会食の席をもうけたところ、互いに共通の趣味があることや、プライベートの繋がりなどを知り、立場や年齢差をこえて、本当の仲間になることができた。


その後、プロジェクトで困難なことが起きても、各社協力して取り組むようになり、プロジェクトは無事に終了した。その後も私たちは、しばしば「戦友会」という名の食事会をしたり、年賀状を交換するような間となった。


もし、プロジェクトの初期に顔合わせの懇親会をしていたら、早くからもっと協力してプロジェクトを推進できたのではないかと思った。



まとめ


このように、肩書きや立場の前に、生身の人間関係を築くことで、仲間意識が生まれ、結果として仕事もうまく回り始めることがある。


うまくいかない相手と仕事の付き合いしかしていないというのであれば、食事にでもいって、これまでの苦労話を互いに話し合ってみてはどうか。きっと変化があるはずだ。

林 英利

JRLA(一般社団法人 日本リレーショナルリーダーシップ協会)代表理事。大和ハウス工業(株)、トヨタ自動車(株)などを経て、プロコーチ・研修講師として独立。2015年より銀座コーチングスクール代表。国際コーチ連盟(ICF)日本支部 顧問